2026/04/02 13:16

「整える」は、ゼロに戻る感覚に近い
—何かを足すより、真ん中に戻る。
「整えるって、何かを“よくする”ことだと思われがちですけど、僕は“真ん中に戻す”感覚が近いですね」。疲れているとき、気持ちがざわついているとき。その状態のまま何かを足そうとすると、かえって歪みが大きくなる。
「まずはニュートラル。そこに戻れないと、どんなに綺麗なものも綺麗に見えない気がするんです」。花をいけることも、クリスタルを置くことも、そのための“きっかけ”にすぎない。

自分の機嫌が、世界の見え方を決める
—花を扱う人として、大切にしている距離感。
「結局、自分の機嫌だと思うんですよね」。どんなに美しい花があっても、自分の内側が荒れていれば、その美しさは受け取れない。でも、自分がニュートラルな状態であれば、ほんの小さな変化や、一見地味な花の魅力にも気づける。
「僕が見つけた“綺麗”を、ちゃんと見える形で置いてあげられたら、誰かも同じように気づけるかもしれない」。だからこそ、まずは自分の状態を整えることが、花を扱う人としてとても大切だと感じている。
感情は、流れるものだと知る
忙しい日々の中で、気持ちが落ち込むことも、余裕を失うこともある。「昔は、それがずっと続く気がしてました」。でも今は、感情は“流れるもの”だと分かっている。
「だいたい数日すると、少し落ち着くじゃないですか」。無理にポジティブにならない。深刻になりすぎない。ただ、流れるのを待つ。それもまた、彼なりのセルフケアだ。

「意味」を与えすぎないという選択
—花も、クリスタルも、ただ美しいから。
「花って、“人を救うために生まれました”みたいな顔はしてないですよね」。自然界で、たまたまその形になり、たまたまその色になった。そこに人間が意味を重ねすぎると、本来の軽やかさが失われてしまう。
「クリスタルも同じだと思うんです。不思議だな、綺麗だな。それだけで、十分」。奇跡として受け取るくらいの距離感が、いちばん心地いい。
理由のない「好き」を信じること
論理や正解があふれる時代。条件を並べて選ぶことに、私たちはすっかり慣れてしまった。「でも、理由が分からないのに惹かれる、って感覚、ありますよね」。友達でも、恋人でも、物でも。説明できないけれど、心が動く瞬間。
「それって、失っちゃいけない感覚だと思うんです」。花やクリスタルは、その感覚を思い出させてくれる存在だ。」

セルフラブは「コップの大きさを決めること」
最後に、「セルフラブ」をどう捉えているかを聞くと、中井さんは少し考えてからこう答えた。「コップ、ですかね」。中が満たされているかどうかより、どれくらいの大きさのコップを持つかのほうが大事だという。
中に何が入るかは、自分では決められない。昔は、「これくらいの大きさじゃないと満たされない」と思っていた気がすると言う。それは、自分のエゴや、社会的な“これくらいが幸せ”という基準が、知らないうちに混ざったものだった。
「今は、その日の気分でコップの大きさが変わってもいいと思えるようになりました」。中に入るものが、透明な日もあれば、少し濁る日もある。それでも、「今の自分にちょうどいい」と思えることが大事だという。
ちなみに、「今、そのコップに何が入っているんですか?」と聞くと、少し間を置いて、こんな答えが返ってきた。
「程よい温度の、ぬる燗ですかね」
取材の最後に、セルフラブカードをランダムに1枚引いてもらった。中井さんが引いたのは、「#26」。

「願う事は全て叶う。ただ時間を要するだけ。」という信念です。
今まで沢山の事を経験させて貰って、願えば、というか想像しうる事は実現すると体験してきました。
例えば人生が山登りだったとして、早く頂点に登り詰めることを競うレースであれば、今を否定して未来にばかりフォーカスしてしまいますが、野山に咲く花や舞う蝶を見ながら一歩一歩踏み締めるトレッキングのような行程が私にとっての人生で、「この一歩も楽しいし、気付けば、やがて辿り着く景色も楽しみである」という考えが自分を奮い立たせる、というか突き動かしているように感じます!
中井侃矢
1994年和歌山生まれ。大学卒業後、サラリーマンを少しばかり経験した後、花屋に。2019年STAYFLOWERをスタートさせる。2021年代田橋に1号店を、2023年中目黒に2店舗目をオープン。
credit
featuring:中井侃矢

