2025/11/30 14:03

情報が渦のように流れる時代に、 “整う”ことは、特別ではなく日常の条件になっている。


クリスタルを手にとり、香りを吸い込み、音楽を聴く——
ごく小さな「約束ごと」から、心は少しずつ澄んでいく。


BEAMS 執行役員/シニアクリエイティブディレクターの土井地博さんは、“天才を支える人”として数多くの場を生み出してきた。

そんな彼が語るのは、「自分はプロデューサーでいい」と思えたときに見えた、整うこと、そしてセルフラブのあり方。




「『へえ』を、毎日ひとつ起こしたい」  感性を保つ、共感のスイッチ。


「僕はインプットとアウトプットの往復でできている人間です。良い話を聞いて、良いものを見て、必ず何かに活かす。そのとき自分の中に『へえ』が出るかどうかをすごく大事にしていて。『へえ』は共感のサインで、解釈のスイッチ。小さくても、毎日一度はその感覚を起こしたいんです。」

「前より鈍くなるところも、逆に深く沁みるところもある。その変化ごと受け入れて、ニュートラルを取り直す感じですね。」

0秒で戻る、感覚の装置  石・香り・音楽の3点でピントを合わせる。


デスクの隅に小さな翡翠を含む数種類のクリスタル、アロマ、ノート。


「忙しくて頭が混乱してきたら、クリスタルを握って深呼吸する。香りを吸い込んで、音楽を一曲。それだけで10秒で戻れるんです。『自分は大丈夫だ』っていう感覚に。セルフラブは甘やかしじゃない。自分の立ち位置を正確に見つめること。無理に変わらなくてもいいし、誰かみたいにならなくてもいい。」


テクノロジーも味方にする。

「最新のイヤホンでノイズを断ち、空間オーディオで一本だけ音を聴く。クリスタルの手触りと、香り、音の没入——感覚の三点で意識のピントが合います。」




祈りの造形に、触れる 翡翠・勾玉・出雲。


「島根県出身ということもあって、翡翠や勾玉にはずっと惹かれるんです。そこには“祈りの歴史”が宿っている気がして。言葉が生まれる以前、山や太陽を神と感じていた——そんな記憶が形として残っているように思います。」


「日本には糸魚川の翡翠、出雲の“眼の石”など、地層や信仰と結びついた石の物語が各地にある。僕は出雲観光大使も務めているんですが、そうした土地の文化や手仕事を知るほど、“クリスタル”がただのスピリチュアルな象徴ではなく、歴史・地層・工芸の文脈に生きていることを実感します。そうやって見つめ直すと、日常での受け取り方ももっと豊かになるんです。」


まずは、決めつけない 最初から否定しない、決めつけない。

「僕には座右の銘があるんです。“先輩から経験を、後輩から感性を学べ。”すごく好きな言葉なんですよね。経験だけを積むと、感性が鈍ってくる。逆に、感性ばかり追うと、足元が浮つく。そのバランスをとるのが大事で。人の“違い”を受け止めていくと、無駄は一つもないんです。」


誰かを動かす前に、まず自分を整える。そのために大切なのは、“決めつけない” “否定しない”というシンプルな姿勢。


「最初の話に戻りますが、年を重ねても、ちゃんと『へえ』と思える自分でいたい。それが、感性を錆びさせない方法なんじゃないかと思うんです。」



土井地 博

(株)ビームス 執行役員  シニアクリエイティブディレクター 兼 ディレクターズバンク室長


ショップスタッフを経て、20年以上BEAMSグループの宣伝PR業務を行い、その後グローバルプラットフォームを持つ国内外の企業や組織、ブランド、人などと次世代に向けたアライアンスを組む新たなビジネスモデルを立ち上げる。現在はディレクターを集結したエージェンシーであるディレクターズバンク室長を務める。シニアクリエイティブディレクターとして革新的な価値創出やブランドイメージの向上、ビームスが目指すビジョン実現に向けた推進を行う。また島根県親善大使、出雲観光大使やこうげい社・旧白洲次郎 正子邸である武相荘のクリエイティブディレクター、その他ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、 司会業、各講演など仕事は多岐にわたる。